ターゲットがズレていると気づいたとき、すぐに次へと動けた柔軟性が成功へと導いてくれた

吉田采都子さん/バースデープランナー協会理事

(プロフィール)
短大卒業後、リクルート社にて求人広告担当。大手海外化粧品会社、インポートランジェリーバイヤー職などを経て結婚、出産、退職。出産後に再びリクルート社にてホットペッパー創刊に携わり11年間在籍。2013年に日本バースデープランナー協会を設立。資格プログラムを開発し、プランナー育成やレッスン開発、講師育成に携わる。

営業職から化粧品会社、派遣社員など様々な職種を転々とし、最終的に辿りついたバースデープランナーという天職。大切な誰かの誕生日を盛大に祝うという幸せをプロデュースする彼女は、とにかくアクティブで力強い。そしてハッピーなオーラに満ちているのだ。とはいえ、バースデープランナーという馴染みのない仕事は、立ち上げ時から順調だったわけではない。様々な葛藤と至難に立ち向かい、資格取得事業で現在までに600人のバースデープランナーを輩出してきた吉田采都子さんに、起業のきっかけから、スタート時の苦悩、さらに夢を実現化させるコツを語ってもらった。
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バースデーイベントで確信した、パーティグッズの可能性

――現在吉田さんは、バースデープランナー協会理事として活躍されていますが、起業したきっかけはどのようなことだったんですか?

吉田:以前、リクルートに勤めていたときに「Hot Pepper」の(グルメ領域の)営業をしていたんです。当時私が担当していたのは銀座エリア。高単価の老舗には、クーポンという概念が全く理解してもらえなかったですよね。それなら値段を安くするクーポンではなく、付加価値として何か企画したらいいのではと考えたんです。そこで出てきたのが、バースデープラン。誕生日にお店に予約をすると、個室をデコレーションするというものだったんです。

――女性が喜びそうな企画ですね。

吉田:そうなんです。フラワーポムや空間を彩るグッズでドラマティックに飾りつけた空間は、爆発的な(反響)を得ることができました。でも、悩まされたのがパーティグッズの入手ルート。今では100円均一で手に入るガーランドやかわいらしい風船も、ほんの10年前までは輸入でしか買うことができなかったんです。私自身、イベントを企画したときに、グッズ探しに本当に苦労しました。でも、いざ飾りつけをして、その写真をアップしてみると、ものすごい反響があるんですよ。そのときにパーティグッズの需要を確信しましたね。

――そこで、パーティグッズを購入できるECサイトを立ち上げたんですね。

吉田:はい。しかし、いざ立ち上げてはみたものの、閲覧数はあるのに購入に結びつかないんです。なぜ可愛いと言われるのに買ってもらえないのかと考えたときに、日本にパーティ文化がないことに気づいたんです。だからこそ、グッズを買ってもどう飾りつけていいかわからないし、そもそも何を買っていいかわからない。私自身も、最初にお店を飾りつけるときに、同じことで悩んでいたことを思い出したんです。もしあのとき、飾りつけを教えてくれる人がいたらどんなに楽だっただろうと。そのときに、飾りつけやパーティグッズを作るレッスンを開こうと考えたんです。

――たしかに、かわいい、やりたいという想いがあっても、どうしていいかわからないのであれば、最初の一歩を出しづらくなりますからね。

吉田:そうなんです。しかし、最初は集客が伸び悩みました。当初、目標とした集客人数が1年に500人だったんですが、そこにはまったく届かなかったんです。

――最初にターゲットにしていたのはどんな層だったんですか?

吉田:私と同じワーキングマザーをターゲットにしました。でも、彼女らはグッズはたくさん買ってくれるけど、仕事が忙しくてレッスンには来れないんですよ。そこで、ターゲットを専業主婦にシフトしました。イメージしたのは田園都市線沿線のママたち。彼女たちがするような素敵なホームパーティやカードづくりを題材にレッスンを開いたところ、すごく反響があったんですよ。なかでも、土日6時間ずつ、計12時間のレッスンのコースには、“サロネーゼ”といわれる、ライフスタイルを楽しみながら私らしく仕事をする、一歩進み出したような方たちを中心に日本全国から受講者が来てくれるようになりました。

――2日間の集中コースで一つの資格が取れるというのは、すごく魅力ですよね。そのスキルを持って帰れば、自分もプランナーとして働けるというメリットもありますし。

吉田:そうなんですよね。でも、意外なのが、ここで資格を取ってバリバリ働こうという考え方の人はとても少ないんです。それよりも、資格を取りつつ、誰かを喜ばせたいという同じ感覚を持つ人たちと出会える情報共有の場としてここが選ばれていることが多いんです。

レッスンに通ってくれる人たちが大事にしているのは、“誠実さ”

――受講者の方は、どんな性格の方が多いのでしょうか。

吉田:誕生日を祝うため(主役を喜ばせたい)といって資格を取りに来るわけですから、優しくて温かい方が多いですね。人とつながりたい、人をお祝いするのが好きという方が継続してレッスンに通ってくれています。そんな方たちが大事にしているのが、“誠実さ”なんです。

――さらにこの事業は、SNSが発達した今だからこそ、より広まったように思います。

吉田:その通りです。誕生日やパーティなどで飾った写真をFacebookやInstagramに掲載すると、そこにいいねがたくさんついて、口コミで広がることができます。なかには、ベビーマッサージをしていた先生が、パーティで飾り付けた写真をアップしたところ、あまりに反響があったことをきっかけに、ベビーマッサージを廃業して、バースデープランナーになったというケースもあるんですよ。

――その柔軟性は素晴らしいですね。

吉田:すごいですよね。 “いい”“かわいい”“笑顔になりそう”という感覚は本当に大事。そこに理屈はなくて、いいと思ったからやってみるという行動力がここまで私を連れてきてくれたんだと思います。

上手くいった瞬間、周りの目が変わった

――途中で諦めようと思ったことはありませんでしたか?

吉田:もちろん、ありました。最初のはずみ車の一歩にいくまでとにかく時間がかかったんですよ。新規事業立ち上げは何度も経験したことがありましたが大企業の中で立ち上げる創業の苦労とは全く異質のものでした。「Hot Pepper」を創刊したときは、大企業ですし何百人というスタッフが参入し、販促費を膨大にかけての立ち上げたんですが、この事業は私ともうひとりのママだけ。情熱と行動力は当時と同じなのに、ついてくる結果が全然違ったんです。レッスンも最初はよくても、3回目、7回目となると人が(集まりにくくなってきて)その頃から、私の中では絶対にイケると思っていたのに、周りはもう(不安でイッパイ!)やめたほうがいいと連呼するようになっていたんです。

――そのときにどんな行動を起こしたんですか?

吉田:私自身は、認知度がないだけで知ってもらえたらきっと回り出すはず、という自信があったので、本当にさまざまな取材先をあたりました。そんな折、以前働いていたリクルートのケイコとマナブ事業部の年始のトレンド発表の内容が「女性の起業」で、バースデープランナーさんの働き方とぴったり一致していることが分かりました。そこで、いきいきとレッスンをするプランナーさんやパーティレッスン&ギフトショップをOPENした方の取材をしていただけないかと直談判しました。

――それまでの関係が大事になってきますね。

吉田:はい。その結果、「ワールド・ビジネス・サテライト」(テレビ東京系)が取材に入ってくれることになり、そこから一気に状況が好転しました。意思を持って続けるためには、まず自分が楽しみながらやらないとだめだと思うんです。

営業電話をかけ続けるママの背中を見て育った長男

――吉田さんは2児のママでもありますが、それだけバリバリと働いて、育児とのバランスはどうやって取っていたのでしょうか。

吉田:主人が協力的で…と言いたいのですが、実は主人は、母親は家にいてほしいと思う人だったんです。でも、私は働きたいという思いを消すことができなかった。そこで”育児に支障をきたさない”と念書を書いて働きに出ることを許してもらいました。とはいえ、ものすごく忙しくなって家に遅く帰る日も。そんな日は主人が怒って会社までパジャマで車に乗り、迎えに来たこともあります。

――すごいですね! そんなご主人をどうやって説得したんですか?

吉田:説得…していません(笑)。私は都合の悪いことを聞かないから、主人には“難聴だ”って言われるんですよ。そんな夫婦を見てきた長男は、中立の立場にいてくれて、立ち回りの上手な大人になりました。驚いたのが、私の営業電話を小さなころから近くで聞いていたからか、根っからの営業マンなんですよ。何も教えていないのに、親の背中を見て育ってくれました(笑)。

好きなことを好きでい続けることは難しい。だからこそ、初心を忘れないことがなによりも大事

――最後に、起業したいと思っている方たちにメッセージをお願いします。

吉田:好きだと思ったことは必ずやり遂げるのが一番だと思います。でも、“これでいいのかな”ってふと考えてしまうこともあるかもしれません。それに、女性の場合、どうしても周囲にかばってもらえる環境になりやすいんですよね。どんなに好きなことをしていても、少し体調をくずしたり、育児でトラブルがあると、“子供のためにやめた方がいいのかな”って思う瞬間もあるし、周りもそれを薦めてくるんです。そうなると、迷って、諦めてしまう人が多いんですよ。

そういうときの為に、どうしてこの仕事を始めたのか、自分が初心に戻れるツールを持っていると、すごくいい薬になります。私も、今の仕事のきっかけを与えてくれた「Hot Pepper」で働きたい、街を変えていきたいと思ったときの気持ちを忘れないために、当時の求人広告を今でも持ち歩いているんです。

――好きでい続けることは難しいですからね。

吉田:そうですね。どんなに好きでも、数年経つとその想いは薄れてしまう。そんなときこそ、自分を奮い立たせるものがあると、いいのかもしれませんね。

――どうしても目標に届かないとき、どうやって乗り越えているんですか?

吉田:「波に乗りながら初志貫徹する」を心がけています。トリッキーな企画はたくさんあるし、別のことに手を出すこともできます。でも、本当にやりたいことならば、初志貫徹でやり遂げた方が引きも強いし、いい仕事ができると思うんです。何事も落ち着かないところに物事は寄ってこないし、パワーが強くまっすぐであればあるほど、人の気持ちを変えることができるはず。世の中の波に乗りつつ、最初にときめいたときの気持ちを貫きとおしたいですね。

(インタビュー/吉田可奈、編集/井上こん)

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