【回り道にも意味がある】リーマンを乗り越えて上場を果たしたCFOが語る「焦らない起業準備」のススメ

賀島義成さん/株式会社エディアCFO

(プロフィール)
上場企業にて単体決算、連結決算、開示資料作成、監査法人対応などの経理業務に従事。2007年4月にエディアに入社後、経理部長として決算早期化、IPO準備、内部統制構築、ERPシステム導入などを担当。2011年5月より同社取締役管理部長。

話題のスマホゲームや地図アプリ、グルメ関連アプリなど、幅広いコンテンツをリリースしている株式会社エディア(東京都千代田区)。2016年4月には東証マザーズへの上場を果たし、事業規模を拡大し続けている。
取締役CFOの賀島義成さんは、この上場準備を推し進めた立役者だ。リーマンショック後の厳しい局面を乗り越え、同社の大胆な事業転換を支えてきた。経営者だった父の背中を見て育ち、自身も子どもの頃から起業を夢見ていたという賀島さん。これまでの歩みと、「さまざまなキャリアを経て起業を目指す」ビジネスパーソンとしての思いを伺った。_MGP1905

「会社にぶら下がるのではなく、自分の力で稼ぐ」という信念

――初めに、賀島さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

賀島:企業向けのシステムインテグレーションを手掛ける上場企業に新卒で入社したのが、私のキャリアのスタートです。経理・財務全般や開示資料の作成などを、約4年間担当していました。

私自身はもともと「将来的には起業に挑戦したい」という思いを持っていたので、より経営に近い環境で働きたいと考え、2006年にベンチャー企業に転職したんです。そこでのキャリアを経て現在のエディアに入社したのが2007年。今年でちょうど10年目ですね。

――「起業したい」という思いは、いつ頃から持っていたのですか?

賀島:子どもの頃から何となく考えていましたね。父は自営業者で、20人ほどの従業員を雇っていました。学校から帰ってくると、経営者として働いている父の姿が見える。そんな環境で育ったんです。

サラリーマンとして安定を追い求めるという発想は、もともと持っていなかったと思います。家業を継ぐ道もありましたが、自分は父とは違う事業で成功したいという思いがあり、経営を学ぶために就職する道を選びました。

―「サラリーマンを目指すこと」と「経営者を目指すこと」には、どんな違いがあるのでしょうか?

賀島:父からは、「お金は自分の力で稼ぐものだ」と教わりました。そのためか、会社に勤めるようになってからも「給料をもらう」という考え方にずっと違和感を持っていたんですよね。「会社にぶら下がるのではなく、自分の力で稼ぐんだ」という思いを常に持っています。経理・財務といった管理系職種であっても、会社に対してしっかり利益貢献ができるような働き方を意識してきました。

――財務分野でのキャリアアップを志したのはどうしてですか?

賀島:将来的に起業するためには、何をすべきかと考えました。経営者により近いところで仕事をしたいという思いがありましたし、経営には財務知識が不可欠だろうと。もちろん経営者には、営業出身の方もいれば、モノづくり分野出身の方もいますが、私の場合は「数字に基づいた経営」を学ぶことが起業に向けての一番の近道だと考えたんです。

入社当時、エディアはちょうど上場準備に取りかかっている時期でした。成長するベンチャーが上場する瞬間に、財務担当者として立ち会いたいという思いがあったんですよね。事業の面白さや会社のビジョンも魅力的でした。当時は「カーナビ」と「モバイルコンテンツ」の2事業を展開し、それらをうまく融合させたオリジナリティのあるサービスも立ち上げていました。

事業転換、そして上場へ。激動の時期に取締役就任

――エディア入社後、新しい環境で苦労したことがあれば教えてください。

賀島:入社翌年に当たる2008年の上場を目指していたのですが、その矢先にリーマンショックが起きました。カーナビ事業ではそれまでのOEM生産だけでなく、メーカーとして独自にハードウェアを作って販売していましたが、個人消費の落ち込みとともに販売計画が未達の状況が続きました。

経営陣が刷新され、私自身は管理部門を見るだけではなく、事業のリストラにも踏み込んでいかなければなりませんでした。非常に厳しい時期でしたが、一緒に働く仲間や、辛くても辞めずに残ってくれた社員がたくさんいたので、前に進むことができたのだと思います。それが落ち着いてからは、他の企業とのアライアンス構築なども経験し、事業構造の転換に向き合ってきました。

――ハードウェアの会社から、スマホゲームやアプリなどのコンテンツを開発する会社へと変わっていった時期ですね。再び上場を目指すまでの間に、どのような変化が起きていたのでしょうか?

賀島:ベンチャーキャピタルから出資を受けていたので、経営陣の間ではずっと「ゆくゆくは何らかの形でイグジットの道筋を立てたい」という思いを持っていました。

私は30歳のときに取締役に就任したのですが、当時は赤字を脱却するかしないかという厳しい状況でした。2年ほど経過して、財務状況も大きく改善し、新しく初めたゲーム事業も伸びてきたところを見計らって、再び上場を目指そうと盛り上がっていきましたね。IPOは足の長いプロジェクトなので、事業が軌道に乗り出したタイミングで準備を始めなければいけないと考えていました。再度上場準備を開始してから成し遂げるまでには、4年間かかっています。

――かなり慎重に準備を進めてきたのですね。

賀島:コンテンツを扱う事業は、ぶれ幅のリスクを考えておかなければいけないと考えたからです。新しく開発したゲームがヒットすればどんどん業績が伸びていきますが、当たらないと厳しい状況になる。一本の大ヒットに頼らない、しっかりとした事業体制を構築する必要がありました。

――上場準備の責任者として、特に大変だったことは何ですか?

賀島:強いて言うならば、厳しかったのは予算管理ですね。ちゃんと計画に対して実績が上がっているのか、継続的に見られるというプレッシャーがありました。上場までのプロセスについては、十分な準備期間があり、上場企業で働いていた経験もあるので、そこまで大きな苦労はありませんでした。

キャリアの延長線上に起業の可能性が広がっていく

――賀島さんご自身が「いずれは自分でやりたい」と考えているビジネスのイメージも、ぜひ伺いたいです。

賀島:いくつかやりたい事業はありますが、「一本で勝負する」よりも「複数の事業をパラレルで展開していく」ような形が理想ですね。私のこれまでの経験上、財務コンサルティングを主軸にした事業も可能だと思いますし、IT業界に関連したB2B事業もやりたいと思っています。

――昨今のIoTスタートアップでは一つのプロダクトが話題を集め、一気に資金調達をしてスケールしていく例も見られます。賀島さんはそうした起業のあり方について、どのように感じますか?

賀島:ベンチャーらしいやり方だと思いますが、どちらかというと私の方向性とは少し違うかもしれませんね。これはなかなかうまく表現できないのですが……。

私の場合、起業という目標を持ちながらも、これまでさまざまな企業に身を置いて経験を積んできました。「やってきたことの延長線上」にたくさんの可能性があると思っているんです。私の力が役立つのであれば、いろいろなフィールドで生かしたい。事業としても「これがやりたい」というよりは「ニーズを発掘し、喜んでいただけることを事業化したい」と考えていています。

――「パラレルアントレプレナー」に近い考え方でしょうか?

賀島:似ているかもしれませんね。

回り道をする期間にも価値がある

――ご自身の経験を振り返って、起業を目指す方にアドバイスできることはありますか?

賀島:「やりたい」と思っていることは、自分で腹を決めて突き進んでいくべきだと思います。多くの壁にぶつかり、それらを乗り越えることで成長できるので、とにかく自身の意思をもって行動することが一番でしょうね。

私自身がそうでしたが、ビジョンに共感できる会社であれば、規模に関わらず身を預けてみてもいいと思います。「会社の成長=自分のやりがい」にできる環境であれば、たくさんのことを学べるはずなので。

若いうちに起業することは素晴らしいことだと思います。一方で、回り道をするからこそ得られるものもある。「人」については特にそうでしょうね。明確なビジョンがあって、やりたい事業が決まっていても、それを支えてくれる仲間がいなければ成り立たないこともあるでしょう。従業員という意味ではなく、同じ目線で、一緒にリスクを取って話せる仲間。それが得られるのであれば、焦らずに回り道をする期間にも価値があると思いますね。

――ありがとうございます。最後にぜひ、貴社の今後の展望についても教えてください。

賀島:エディアは現在、「ゲーム」と「ライフサポートサービス」の二軸で、スマートフォン向けのコンテンツサービスを拡充しています。これまでは国内市場をメインに展開してきましたが、今後はインバウンド市場や、海外のビジネスプラットフォームに向けての商機も確実にとらえていきたいですね。

そのためには採用を強化し、人員体制の充実を図っていくことが重要だと考えています。上場したとはいえ、マインドはまだまだベンチャー企業。アグレッシブに挑戦できる人材と出会い、さらなる成長に向けて走っていきたいと思います。

(インタビュー/多田慎介、編集/井上こん)

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