「可能性が1パーセントでもあるなら挑戦すべき」10人での貧乏生活から急成長を実現した社長が語るイマドキ根性論

虎石克さん/株式会社C-mind代表取締役

(プロフィール)1986年、新潟県上越市生まれ。東洋大学卒業。大学在学中から人材ベンチャー企業のアルバイトとして数々のプロジェクトに参加し、卒業後は同社で人事戦略などを担当。2011年にC-mindを設立。

「根性が大切」———。若干25歳で会社を立ち上げ、辛酸を舐め続けながら事業を拡大してきた社長の口からは、古き良き日本企業の社訓のような言葉が飛び出した。

株式会社C-mind (シーマインド)は、定額制レンタルプリンターの「スリホ」をはじめとしたコスト削減提案事業を軸に急成長を続けている。代表取締役の虎石克さんは現在30歳。創業当初に資金難に陥り、一時はライフラインが止まりそうになるという「危機」も経験したそうだ。どん底から這い上がってきた起業ストーリーを、ざっくばらんにお話いただいた。

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学生時代から起業を志し、ベンチャーに飛び込む

――虎石さんは25歳で会社を立ち上げたということですが、起業はいつ頃からお考えだったのでしょうか?

虎石:学生時代、18歳の頃から考えていました。「社会に出たら活躍して、かっこいい大人になりたいな」と思っていたんです。早い段階で力をつけたいと考えて、営業職のアルバイトをしたり、ベンチャーにインターンとして入ったりしました。

――在学中から積極的に社会と関わろうとしていたのですね。

虎石:そうですね。20歳のときには、創業1年目の人材ベンチャーにアルバイトとして入りました。人材派遣と人材紹介をメインに、その後いろいろなグループ企業を展開し、今では社員数が1000名を超える会社です。大学卒業後はそのままその会社に入り、25歳までお世話になっていました。会社の向かいに引っ越しするくらい熱が入ってましたね。

――会社の向かいに引っ越しとは……。それはいつ頃の話ですか?

虎石:最初にアルバイトとして入社した20歳のときです。何とか会社の経営側に入り込んで起業に向けた勉強をしたいと思っていたので、「とにかく誰よりも時間を割こう」と思っていましたね。

22歳で「100名のマネジメント」に挑戦

――最初はどんな仕事を担当していたのでしょうか?

虎石:現場を理解するために、自分自身が派遣スタッフとして働いていました。引っ越し、プラカード持ち、ティッシュ配り、工場、倉庫、飲食、営業、経理など100種類ぐらいの仕事を経験したと思います。現場でクライアントから評価されれば次の依頼につながるという意味では、営業職の側面もありました。「ここでの評価が会社の売り上げにつながるんだ」と、誇りを持って現場に向かっていましたね。

――大学を卒業してからはそのまま就職したのですか?

虎石:実は大学4年生のときに管理職を任されていて、その分の給料ももらっていたんです。その流れで就職したという感じですね。22歳で社員と派遣スタッフを合わせて100人以上のマネジメントをしていました。

――なかなか、22歳という若さで経験できることではありませんね。

虎石:そうですね。成果主義の会社だったので、年齢に関係なく任せてもらえたのだと思います。ただ、自分が部下に教えていることが合っているのか分からなかったので、いろいろな本で勉強したり、社長に教わったことを実践したりという毎日でした。

部下が次々と退職……「一緒に泥にまみれる」スタンスへ転換

――マネジメントではずいぶん苦労もあったということでしょうか?

虎石:そうですね。何をすればうまくいくのか分からず、失敗も多かったです。当時の私はとにかく目標が高く、部下にも自分の目標を押し付けた結果、会社を辞めてしまうといったこともありました。部下の考えに共感せず、結果が出ないことを頭ごなしに叱って……。自分ができることを、相手に押し付けているだけだったんですよね。結果的に部署の業績は伸びず、「これではダメだ」と痛感しました。「ともに成長しよう」というスタンスに改めてからは、人が辞めなくなりました。

――その変化の背景には、どんなターニングポイントがあったのでしょうか?

虎石:もともと30人ぐらいいた部下にどんどん辞められてしまい、2人だけになってしまったことがあったんです。当時は「辞めるほうが悪い」と人のせいにしたのですが、その考え方は社長に全否定されました。「まずは相手を認めること。一緒にやってもいないのにできるかどうかなんて分からない。時間を共有して、相手に共感することが大切なんだ。まずは一緒に泥にまみれろ」と。その後、自分自身のスタンスを変えたら強固な組織ができました。あのときに失敗していなかったら、今の会社もなかったでしょうね。

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創業メンバー10人で貧乏共同生活を送っていた1年目

――起業当初から、事業は順調に進んだのでしょうか?

虎石:生々しい話ですが、会社を立ち上げてすぐにお金がなくなりました。アプリやゲーム開発、芸能関係や広告代理業など、「とにかくかっこいいと思うこと」に次々と手を出してはことごとく失敗しました。たとえば、経営者の知識が学べる「社長育成ゲーム」を開発して失敗。社長になりたいと考えている人ってそもそもゲームをしないんですよね。次に、ゲームといえばオタクだと考えて「アイドル育成ゲーム」を開発しましたが、社内にオタクがいなかったのでユーザーの気持ちが分からず失敗。そんなことを繰り返していました。

――資金的にも相当きつかったでしょうね。

虎石:1年目の年商は1700万円でしたが、社員が10人いたので給料が払えず、みんなに自宅を解約してもらって「会社兼全員の自宅」にしました。狭いスペースに、10人で共同生活をしていたんです。ライフラインが止まりかけたことも一度や二度ではありません。そんなどん底の状態で2年目を迎え、「人の力で勝てる事業は何か」と営業代行の仕事に絞ったところ、年商1700万円から一気に2億3000万円まで成長したんです。その一転突破の経験から、「人に密着した企業」として成長していこうと軸を決めました。

――そこで極限の生活をともにした10人の仲間の結束がすごいですね。

虎石:本当にお金がなかったので、将来の夢を語るしかなかったんです。だから、絆は固いですよ。創業当時の仲間は今も残ってくれています。

――創業メンバーはどのようにして集めたのですか?

虎石:前職の部下や、私のもともとの飲み友達など。「最初は責任を持てないよ」と言いました。一緒に会社を大きくしたい、給料が0円でもいい、それぐらいの覚悟が決まっているなら一緒に仕事をしようと話して、仲間に加わってもらったんです。私が25歳、最年少のメンバーは21歳。若造の集まりですが、向上心は人一倍持っているチームでした。

中小企業を応援し、世の中をフラットにしていく事業に挑戦

――売上を20倍近くに伸ばした2年目に定めた「人密着型企業」という理念には、どのような思いを込めているのでしょうか?

虎石:どんなに時代が変わっても、「人を思うこと」を続けていきたいと思ったんです。それがルーツであり、創業の目的でもあるので。人を思えるような人材教育を徹底することと、人の力で切り開ける営業力強化を徹底する。そして、どんなに収益性があっても社会のためにならないことはやらない。そんな基本方針を掲げました。

事業戦略は「多角化ではなく総合化」。中小企業が元気になれば日本も元気になるので、経費削減や売上アップ、業務改善を一貫してサポートしていきたいと考えています。フルカラー印刷を定額制にしたレンタルプリンターサービス「スリホ」も、そんな思いから生まれました。

――この事業は、どのようなプロセスを経てスタートしたのですか?

虎石:代理店として他社の複合機を売るのは簡単ですが、それでは請求書に「シーマインド」と名前が載るだけで、やりがいを感じない。「自社サービスを展開したい」という思いが強かったんです。独自性があってナンバーワンを目指せて、安定収益にもつながる。そんな事業を模索していました。

そんな中、とある韓国企業の社長から「日本は印刷代が高い。韓国ではフルカラーで何枚印刷しても無料だよ」と教えてもらって、刷り放題の定額制サービスを考えるようになったんです。競合もいますが、それだけ市場があるということですね。

――「印刷コストの削減」というイノベーションを事業化したのですね。

虎石:はい。「世の中をフラットにしていこう」という考え方に基づいています。ビジネスシーンでも、使えば使うほどコストがかかる課金制のモデルはまだまだたくさんあります。中小企業の経営を支援するために、それらをフラットにしていきたいですね。他にも攻めていけそうな市場があるので、今は新卒内定者のメンバーを中心に新規事業プロジェクトを立ち上げ、準備しているところです。

起業家に必要な「根性」とは

――内定者がいきなり新規事業に取り組むというのはユニークですね。

虎石:そうかもしれませんね。今年は現段階で20人弱の内定者がいるのですが、みんな頑張ってくれていますよ。「社内の常識」という先入観とか、「予算を確保できなければ評価が下がってしまう」といった自己保身の考えを、良い意味で持っていない。これは新規事業向きだと思います。「新規事業をやりたい」と言って、大手企業の内定を蹴ってきたメンバーもいるんですよ。

――やはり、かつてのご自身に近いような、起業マインドを持った学生を選んでいるのですか?

虎石:はい。起業マインドを持っている人が大好きです。一方で、経営者としては「いつか離れていってしまうのでは」という怖さもあるんですが、それでも最終的に面白いことを一緒にできる仲間として、ずっとつながっていられればいいと考えています。優秀な人材を1社で囲い込む時代ではないと思うので。

――そうした学生さんたちを含め、これから起業を目指す若い方に伝えたいことはありますか?

虎石:何よりも「あきらめないこと」ですね。私自身の経験から言えば、1パーセントでも可能性があることなら、自分の努力次第で100パーセントまで持っていけるはずです。やれる方法はいくらでもある。「やる」ではなく「やり抜く」、「考える」ではなく「考え抜く」といったような、あと一歩の部分を妥協しないことが大切だと思います。平たく言うなら……起業家としての「根性」ということなのかな、と。

今どきの物の言い方ではないかもしれませんが、「理想は高く、現実は泥臭く」。コピー機を1台ずつレンタルしていく事業も随分泥臭いとは思いますが、そこから新規事業につながるアイデアも生まれています。そうやって一歩ずつ、着実に歩んでいくことが、起業家としての成功につながっていくのだと思います。

(インタビュー・文/多田慎介、編集/井上こん)

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